殺人犯に仕立てられ、ひどい誹謗中傷を受けてきたスマイリーキクチさん。
デマから20年経った今でも被害を受け続けているといいます。
無関係だった彼が疑われた理由は何だったのでしょうか。
この記事では以下についてまとめたいと思います。
- スマイリーキクチの事件のデマ説はなぜ起きたのか
- 誹謗中傷の内容がエグすぎた
まだ今のようにネット社会が進んでいなかった当時。
一体どんなことが起きていたの?
スマイリーキクチの事件デマ説はなぜ起きた?
今から35年前に起きた女子高生コンクリート詰め殺人事件。
彼はこの凶悪事件の犯人として仕立てられてしまったのです。
ネット掲示板への書き込みがきっかけ
事件から10年後の1999年。
スマイリーキクチは殺人犯の一人だった
という内容がネット掲示板(2ちゃんねる)に書き込まれました。
事件の加害者は当時未成年だったため実名は公表されていません。
そのためネット民たちは、
彼らの実名を特定したい
その後の状況を知りたい
と必死になっていました。
事件当時とは違いネットの世界が進んできたことで、過去の事件に興味を持つ人も増えていたのでしょう。
ガセネタも多く飛び交っていたといいます。
その中でキクチさんの名前が出てきたのです。
「爆笑オンエアバトル」(NHK)で好成績を残すなど、人気お笑い芸人として活躍しはじめた時だったキクチさん。
そんな彼があの凶悪事件に関わっていたというショッキングな情報は一気に拡散。
人殺し
などの激しい誹謗中傷を受けることになります。
犯人グループと出身地と年代が同じだった
事件とまったく関係なかったにもかかわらず、事件デマ説はどうして起きたのでしょうか。
- 事件が起きた足立区出身だった
- 少年グループと同じくらいの年齢だった
事件と彼の関係性は、たったこれだけ。
それにもかかわらず、何者かがネット上で彼を犯人扱いしたのです。
出身地と年齢が同じだから「犯人かもしれない」は、どう考えてもおかしいですよね。
それなら何千、何万人の人が容疑者になってしまいます。
まったくのデマとはこうやって起きてしまうのか…
ちなみに事件が起きた地域は、同じ足立区でもキクチさんの出身地から遠く離れた場所。
ほとんど行ったことがなかったそうです。
さらにデマが拡散
出身地と年代が同じというだけで犯人一味と噂されたキクチさん。
さらに様々なデマが拡散しました。
- 「ボキャブラ天国」で殺人事件をネタにしていた
- 元ヤンキー芸人として事務所が売り出していた
- 暴走族に入っていたことがある
- 犯人リストの中に同姓同名がいる
まず、①に関してはおそらくデマ。
当時大人気だったお笑い番組「ボキャブラ天国」やお笑いライブで事件をネタにしたと言われていますが、
実際に映像などは残っていません。
ネタの中に「拉致するぞ」というセリフがあり、これが事件ネタとこじつけられたという説もあります。
②③に関してもデマ。
ただし、若い頃やんちゃだったことがネタにされたことはあったようです。
「ボキャ天」出演時に、
昔はけっこう悪かったらしいね
などといじられたことがあったのだとか。
中学時代のヤンキー写真が番組で使われたこともあったといいます。
しかし、②③のような事実はありません。
④についてもデマ。
噂レベルの“犯人リスト”の中に菊池という人物がいたと言われていますが、同姓同名ではなかったようです。
元刑事が裏付けのない情報を流す
ようやくネット民からの攻撃が落ち着いてきた2005年。
予想外の展開が待っていました。
元刑事という人物が著書で、あの殺人事件の犯人グループについて言及。
その中に、
刑期を終えて出所した一人がお笑いコンビを組んでデビューした
という内容が書かれていたのです。
コンビでデビューし、その後ピン芸人となったキクチさん。
実名が出ていなくても彼を匂わせていることは明らかでした。
特に裏付けのある情報ではなかったそうなのですが、元刑事の証言にネット民の怒りが再燃。
芸能界活動への批判や関係者への批判は絶えることなく、ものすごい数の殺人予告も投稿されたといいます。
元刑事の証言はインパクト大ですよね。
「やはりキクチが犯人だったのか!」と盛り上がってしまったのでしょう。
ちなみにキクチさんはこの本の出版差し止めを要求しましたが、
出版社側は、
この内容で彼が事件の犯人と認識する読者はいない
として拒否。
執筆した元刑事も、
あなたの名前は出していない
と、取り合ってくれなかったそうです。
誹謗中傷の内容がエグすぎた!
まったくのデマを発端に、凶悪事件の犯人として被害を受け続けたキクチさん。
その内容はどのようなものだったのでしょうか。
ひどい誹謗中傷コメントが投稿された
所属事務所の掲示板には、
などの言葉がびっしり書かれていたといいます。
彼はそれらのコメントを印刷していたそうなのですが、段ボール4箱分にもなったそうです。
とにかく大量のコメントが書き込まれ、どれもエグすぎる内容だったのか…
コメントの8割は殺人予告だった
投稿の8割は殺害予告。
これにはさすがに恐怖を感じ、
本当に誰かに襲撃されるのでは…
と思っていたそう。
何か危険なことが起きないように、仕事後は直帰していたそうです。
さらに
自分の周りの人が傷つけられるのではないか
という不安もあり、
- なるべく人付き合いを減らす
- 彼女とできるだけ連絡を取り合う
このような怯える日々を送っていたようです。
テレビ局やスポンサーへも嫌がらせが
彼への嫌がらせは、仕事関係者にも及びました。
- 出演しているCMの会社
- 出演番組のテレビ局
- 出演番組のスポンサー会社
これらに対しても、
殺人犯をテレビに出すな
と非難が殺到。
彼がテレビに出るたびに視聴者から怒りの声が寄せられたのだとか。
さらにライブ会場でも、彼がステージに上がると観客がザワつくなど異様な雰囲気になったといいます。
これにより芸能活動を自粛せざるを得ない状況になったそうです。
警察の対応もひどすぎた
殺人予告まで書き込まれ切羽詰まった彼は、警察に助けを求めました。
しかし当時はまだネット犯罪が世間に浸透していない時代。
警察の対応もひどかったといいます。
- こんなことで警察は動かないよ
- あなたが行くべきところは警察じゃなく精神科だよ
- ネットを見るからダメなんですよ
- 芸能人の有名税のようなもの
- 殺人が起きたら捜査してあげるよ
このような信じられない言葉を笑いながら言われたというのです。
今では考えられないようなひどい対応!
ネット社会の怖さを誰も知らない状況だったんだろうね…。
スマイリーキクチの現在
殺人犯のレッテルを貼られ、ひどい誹謗中傷を受けてきたスマイリーキクチさん。
その後の生活はどうなったのでしょうか。
誹謗中傷した19人が摘発される
1999年に被害を受けてから約10年後の2008年。
改めて警察に相談した彼は、やっとネット犯罪に詳しい刑事と出会い状況は一変。
2009年には書き込みをした19人が摘発。
2011年には、これまでの戦いをまとめた「突然、僕は殺人犯にされた」を出版しています。
誹謗中傷は続いている
キクチさんへの誹謗中傷の罪で19人は摘発されましたが、被害がなくなったわけではありませんでした。
実は現在も続いているといいます。
2020年の朝日新聞のインタビューでは
被害はなくなっていない
殺害予告がくることもある
と仰っていました。
ブログに殺人予告が書きこまれ、予定されていた生放送の番組出演を急きょ断念したこともあったそうです。
ネット犯罪についての講演活動を行っている
お笑い芸人としての仕事を失ってしまったキクチさん。
どん底の状況から救ってくれたのは芸能界の仲間だったそうです。
- 爆笑問題
- 千原せいじ
- 水道橋博士
などの後押しもあり、ネット犯罪についての情報を発信する活動を行っているそうです。
- 講演
- メディア取材
- 番組出演
などを通して、ネットの恐怖や、被害者・加害者にならないための対策などを発信しています。
2019年には一般社団法人インターネット・ヒューマンライツ協会を立ち上げ、精力的に活動しています。
これからもネット上の問題はより深刻化していくことでしょう。
彼の貴重な体験談などの情報は多く人を救ってくれるはずです。
まとめ
スマイリーキクチさんの事件デマ説はなぜ起きたのか、エグすぎる誹謗中傷の内容などをお伝えしてきました。
ちょっとしたイタズラが発端で10年以上も被害を受けることになってしまったキクチさん。
改めてネット社会の恐ろしさを感じました。
彼への被害が完全になくなる日がくることを強く願っています。
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